2016年02月01日
現在、本すくいの機屋さんは大変少なり、数件を残すばかりとなっており、すてきなすくい織の帯に出逢って頂けることが少なくなってきているので、すくい織の風合いを生かしながら“きもの白”らしく、動きや遊びのあるお洒落な名古屋帯を制作したいとの事から、今回の帯の制作が始まりました。
オリジナル制作にあたり、まず、以前織られた帯の資料等を沢山見る事から始まりました。紋丈(柄の大きさ)があり、すくい織で制作する事によって、より模様に表情や深みが出るものがいいという思いで、多くの資料に目を通していきました。
その中で『インド刺繍紋』と銘の付けられた模様に目が留まりました。見た時には、インド刺繍という印象はあまりなく、なんともユーモラスなフォルムでありながら、すっきりとした印象も与えてくれる、静と動を感じこれでお願いしようという事になりました。
次に、地色を決める事となります。
濃い目の地色がいいかなと言う漠然とした思いから、黒系、茶系などの濃い地色を見ている中で、深い緑。カーキ色っぽい物は、なかなかないと言うこと。又、選んだ模様との融合でモダンな雰囲気が出るのではないかと言う事で、地色が決定しました。
ただ、この地色がなかなか曲者であったと、地色見本を織って頂いていく過程で分かってきました。経糸と緯糸の両方の色が重なり、地色を生み出しています。つまり、人の目には、経糸の色と緯糸の色がまじりあったようにして映ります。
経糸に、一般的によく使う黒や白(この二色にも大変幅があり、一色ではないのですが)がかかった状態で、緯糸の緑を合わせたところで、なかなか思う色が現れず、何回も色を変えて織っても頂く事によって、ようやくコレだ!!と言う地色と出逢う事ができました。
刺し色については、事細かく決めることはなかなか難しく、メリハリがありながらもきつくならないなじみ感が出る“きもの白”好みの色バランスを、色糸にてご提案頂きました。その中の色から希望の色のイメージを選び、ちょっとしたかすれ具合、色のバランスは職人さんのセンスにお任せして織って頂く事になりました。
すくい織は帯一本一本、下絵をもとに職人さんの感性で織っていくので、全く同じ仕上がりになることはなく、趣は織る職人さんによって変わっていきます。柄の部分はすくい織と綴れ織りの技術が使われていて、その二つをどのようなバランスで使い、織っていくかということも、職人さんのさじ加減で、それによって全く違った表情の帯となります。
今回は、縁あって織って頂く職人さんとも会ってお話しさせて頂き、その方のセンスに触れる事によって、より安心してお願いできました。
こちらの帯は、小紋や紬はもちろん、色無地、付下げなどにもシーンによってお使いいただけます。